四国九州④

高松

4日目。高松市から始まる。

7:50ころに快活を出て、近隣のうどん店に向かった。

コンビニのような味気ない見た目だが、入った瞬間生地をこねている光景が目に飛び込み期待値が上がる。

冷かけを注文した。表面がなめらか、生地がもちもちで、食べ進めても食べ進めても終わらない気がする。麺は細め。空腹のはずだが、一杯でかなり満足した。

私鉄に乗り、2軒目に向かう。ここは明太釜玉バターうどんが名物らしいが、朝からそんなものは入らない。

冷ぶっかけを頼む。レモン付き。これも先ほどの店と同様、滑らか、もちもちでかなり腹が膨れた。とはいえ個人的には、もう少し潔く噛み切れる方が好みである。

松山には行列店もあるが、おそらく平均レベルが高いのでどこでも満足できるだろう。ラーメンハゲの言が思い出される。

腹ごなしに、高松城に向かった。徳川光圀の子、松平頼常が藩主だった時期もあり、「水戸黄門」には松山を目的地とするシーズンも存在する。

それでも大して腹は減らなかったので、特急「いしづち」(右)に乗って松山に向かった。またアンパンマン列車に遭遇した。混みあうかなと思ったら全くそんなことはなかった。

昨日のうずしおより新しく、コンセントやフットレストがあった。

海沿いを走るため、とてもきれい。対岸は本州か。

松山

愛媛なのでみかんジュースを飲む。

松山市には路面電車が走っており、駅や道後温泉を結ぶ。細かく移動しそうだったので、一日券を買った。

1日券は5回乗れば元がとれる上に、なんと松山市駅前三越で運行する観覧車の券も付いてくる。せっかくなので、観覧車は苦手だが乗ってみた。

怖い。怖すぎる。奥に見えるのは、これから向かう松山城である。透けている観覧車もあるが、よく乗れるものだと思う。急に地震が起きる想像ばかりしてしまった。

一度宿にチェックインし、松山城に向かった。松山城平山城で、標高130mほどの山の上に建つ。ロープウェイとリフトがあり、選べる。行きはロープウェイを選んだ。

ロープウェイから降りると、石垣が聳え立つ。ここからチケット売り場まで10分ほど歩いたが、見どころはたくさんあった。

山の上からの景色。

天守は珍しい四角形になっており、入ろうとした敵を四方から挟み撃ちにすることができる。

そして、なんと天守松山城VRがあった。松山城を攻めたらどこでやられるのか、など面白い映像だった。阿波踊りVRと合わせると、この松山城VRが人生2回目のVR体験となる。

帰りはリフトで降りる。

松山城から降りると17時くらいになったので、道後温泉に向かう。路面電車の終着駅になっている。

みかんジュースの飲み比べと、清見ジェラートを楽しんだ。

よーし、道後温泉本館に向かうぞ!と思ったら、なんと整理券を配っていた。18:00時点では19:00からしか入れないということだった。予定を変えてまずは飛鳥乃湯泉に入ることとし、20時の整理券をもらった。

温泉街の終着点にドンと建っているのかと思っていたら、少し外れたところにあり歩道も狭い(写真は車道を挟んだ反対側から撮っている)。

さらに工事中で、「坊ちゃん」にも出てくる休憩スペースは利用できなかった。

予定を変えて向かったのは「飛鳥乃湯泉」である。これは新しい建物で、坊ちゃんではなく、飛鳥時代聖徳太子が訪れたことに由来する。ここでは休憩室を利用することができる。

休憩室を利用する際の動きを説明しよう。まず一階でチケットを買い受付に提示すると、風呂の前に2階に案内される。2階は大広間で、こんな感じの盆と座布団が並んでいる。

浴衣が渡され、荷物(貴重品を除く)を2階に置いて風呂に入ってくるように案内を受ける。

入浴を終えると、茶と茶菓子が出てきた。よく冷えた冷茶でありがたい(おかわり自由)。

持って来た「坊っちゃん」を少し読み、19:20くらいに施設を出た。坊っちゃん団子を食べ、「坊っちゃんからくり時計」に向かう。

動画で見せられないのが残念だが、時計自体がせり上がり、盤面が反転して、坊っちゃんの登場人物をイメージした人形が踊る。なかなかシュールな光景だったが、面白かった。

風呂上がりのビール。「坊っちゃんビール」をテイクアウトした。どの辺りが坊っちゃんなのかよくわからないが、湯上がりに飲むビールは美味い。

坊っちゃんについて

坊っちゃんは筆者が好きな小説で、いままで十何回(何十回?)も読んでいる。数年前に二宮和也主演でドラマ化もしたが、これも名作である。キャスティングは以下。

坊っちゃん二宮和也

山嵐古田新太

赤シャツ(教頭):及川光博

野だいこ:八嶋智人

狸(校長):岸辺一徳

うらなり:山本耕史

マドンナ:松嶋菜々子

ただ、小説とドラマでは大きく内容が異なる。以下は、小説、ドラマ双方を見た方でないとよくわからないと思うので、見たことがない方や、これから見る予定でネタバレを食らいたくない方ははここでページを閉じてもらえればと思う。

原作の「坊っちゃん」は、端的に言えば、問題が何も解決していない。最後闇討ちのような形で赤シャツと野だいこをぶん殴り、

下女に巡査は来ないかと聞いたら参りませんと答えた。「赤シャツも野だも訴えなかったなあ」と二人は大きに笑った。

で終わりである。赤シャツがうらなりの婚約者(マドンナ)を奪って延岡に飛ばした話とか、いたずらばかりして反省しない生徒の話はその後触れられない。赤シャツはマドンナと結婚したのだろうし、学生もあのままだろう。悪役である2人は、主人公2人の奇襲(犯罪)でしか罰を受けていない。というか主人公側が暴行罪なのだから、もはや罰ではない。

一方、ドラマ版は違う。学生は「坊っちゃん」に心を動かされ、それを見た野だいこは赤シャツに愛想を尽かし、マドンナはうらなりと駆け落ちをする。そして赤シャツは、他の先生の前で一発殴られる。坊っちゃんが赤シャツを殴るシーンとマドンナが駆け落ちするシーンがうまく編集されており、「一瞬で色々と失った赤シャツ」を強調している。ちなみに、赤シャツは帝大文学部卒なので筆者の先輩にあたる。

原作よりドラマの方が多元的で、起承転結が明確になっている。一方ドラマより原作の方が、「良いところもあるが悪いところもある」というような描写が多く、単純な勧善懲悪で終わらない奥深さがある。

どちらが良いのか、どちらが好きか、という話だが、結局どちらも好きである。ただ、ドラマのストーリーを小説にしたり、小説をそのままドラマにするとあまり面白くないような気がする。放送当時は賛否あったかもしれないが、ドラマに応じたアレンジという点では、大成功しているドラマだと思う。

今後実写化が行われる際は、そういったアレンジの工夫にも目を向けて楽しんでみたいものである。