3/9 古代を訪ねる旅②伊勢神宮、室生寺、長谷寺

続きです。

伊勢神宮

快活で起床し、禊(つまりシャワー)を済ませるとすぐさま快活を出た。6時15分。代金は1440円だった。激安。あまり寝心地がよくないため早起きできるのも良い。

まず向かったのは外宮である。外宮は豊受大神宮とも呼ばれ、内宮におわします天照大御神の食事を司る神。天照大御神はもちろん、皇室の祖先神であり日本で最も重要な神様。

長野市戸隠山は、天照大御神が引き籠った岩屋の扉であるという。

ちなみに長野の諏訪大社は上社と下社に分かれ、上社は本宮と前宮に分かれるが、本宮と前宮には序列がある。分掌のありかたは違うが、この点ではとてもよく似ている。

伊勢神宮には式年遷宮という行事がある。20年ごとに社殿、神宝を造替するのである。ゆえに建物自体は文化財ではない。20年というのはおそらく1世代のことで、20年に1度建て替えれば、造営のノウハウが次の世代に脈々と継承できるのであろう。内裏などは、焼けて再建する際にどう建てていいかよくわからない、というケースがあったので、合理的なやり方だと思われる。式年遷宮とはどういうものか、下の写真を見るとわかりやすいだろう。

バスにて内宮に移動する。さすがに早すぎてどの店もやっていなかったので、赤福本店で朝食を摂った。

良い門前町である。

いよいよ内宮に入る。まず気になったのが下の建物。左が御酒殿、右が由貴御倉というが、「由貴(ユキ)」が気になる。大嘗祭の費用を賄うために指定される地域を「悠紀・主基(ユキ・スキ)」というためである。国史大辞典によると、ユキとは聖域という意味らしい。古代は音が大事なので、(当て)字が違うのはあまり気にしない。

御稲御倉も興味深い。高床式倉庫で、ちゃんと「カギ」も付いている。

そもそも伊勢神宮の殿舎の構成がかなり大嘗宮に似ている。もちろん掘立柱建物の神明造は明らかに共通しているが、殿舎の配置もどこか似ているところがあった。神社関係については不勉強なので、それらしいものを見てもあまり明快な解答を導き出せないのが残念であった。

寺もいいが、古代を感じるという点ではやはり神社に勝るものはない。法隆寺薬師寺などの寺院でも古代を感じることはできるが、神明造の神社は、天皇制を基礎づける原始的な祭祀のあり方(祭=祀=政=まつり)を現代に伝えてくれるという点で、より日本の歴史を感じることができると思う。

と思っていたら、神域を散水車が走り抜けていった。

1店だけ開いていたので、伊勢うどんをたべることができた。とても柔らかい。何より、安い。これで600円である。観光地の名を冠した食べ物なんて1000円取ってもおかしくないが、伊勢は非常に良心的である。

室生寺

奈良に向かう。まずは室生寺である。室生寺は女人高野とも呼ばれ、古くから信仰を集めてきた。教科書なら「弘仁・貞観文化」のコーナーで取り上げられる。一木造の薬師如来像など有名な仏像も多い。

室生寺は「室生口大野」駅からバスで14分の場所に位置する。しかしこのバスが問題で、1-1.5時間に1本しか運行しない。1時間ほど待たされる羽目になったので、近くの「大野寺」に行った。何やら大きな磨崖仏(岩に彫った仏)があるらしいので、栃木県の大谷観音ばりのものを期待して見に行った結果が以下の通りである。

なるほど、もしかしたら磨崖仏かもしれない。ただの岩と言われても全く違和感はない。ただあると言われればたしかにそこにある気がするのである。いわば、「相対的磨崖仏」といったところであろうか。

ようやくバスが来たので長谷寺に行く。バス待ち中に、一人旅に来た熊本出身のご婦人と仲良く?なったので金堂まで一緒に行った。

教科書の通りなので感動した。想像して見てほしい。いつも画面越し、写真越しでしか見たことがない好きなアーティストや芸能人を生で見た時の感情を。それである。

金堂の中に入ると、お馴染みの釈迦如来像、薬師如来像が静かに立っていた。少し石段を登ると本堂がある。

綱吉生母、桂昌院と関係があるらしく、本尊は如意輪観音であった。参拝者(主に女性)の悩みを聞くために、常に開帳しているらしい。

さらに石段を登ると、五重塔がある。日本で2番目に古いというすごい塔なのだが、小さいということでも有名である。実際見てみると、どう考えても人が入れなそうなくらい小さい。

さらに上がると、奥の院があるらしい。高野山金剛峯寺にも、弘法大師が眠る奥の院がある。階段700段とのことだが、頑張って登る。

頂上に着いた時には汗ダラダラになっていた。若いお坊さんが説明してくれたので、直前まで他人と喋っていたこともあってか、「奥の院行くのって、経験積めば慣れるんですか?」と聞いてみた。「全然慣れないです」との答えだった。これから長谷寺行くんですと言ったら、「長谷寺は400段くらいしかないですけど一段あたりが小さいので精神力が必要です」と教えてくれた。

この辺りで足が蒸れてきて、歩くと痛い。これも修行だと思い長谷寺に向かう。バスが少ないので行きで一緒になったご婦人とまた喋り、方向が同じだったので電車も一緒に乗った。本人は花粉症ではなく、旦那さんが最近花粉症になりはじめたとのことだったので、「労わってあげてください」と伝えてきた。花粉症でない人が心底羨ましい今日この頃である。

長谷寺

長谷寺真言宗豊山派の総本山。長谷寺駅が最寄りであるが、この長谷寺駅、とんだ詐欺である。高低差が激しい道を20分歩き、やっと長谷寺に着く。確かに「長谷寺前駅」とは言っていないが、「長谷寺駅」と付けるのも憚られるくらい遠い。「(他の駅に比べれば相対的に)長谷寺(に近い)駅」という意味だろう。「相対的長谷寺駅」である。

長谷寺は鎌倉にもある。そして意外なことに、長野にもあるのである。稲荷山駅から徒歩10-20分ほどの風情ある山寺で、十一面観音が本尊。奈良、鎌倉と並んで「日本三所長谷観音」と称されているのだから驚きである。

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奈良の長谷寺は、長い登廊が特徴。これを登った先に本堂がある。

本堂は清水寺のような懸造。(https://www.yomiuri.co.jp/hobby/travel/ryokou-select/20210506-OYT8T50038/より引用。普通に歩いていると木が邪魔でいい感じに懸造が撮れない。)

特筆すべきは、本尊の大きさである。なんと10メートルあまりある。鎌倉も同様に非常に大きい。奈良長谷寺の特徴として、「本尊に触れる」ことがある。拝観料1000円を払えば、本尊の足に触ることができ、内陣にも入ることができる。一見高いが、十分その価値はある。

帰り際、あまりに足が痛いので日帰り入浴させてもらった。

今日の宿は快活クラブ橿原店である。昔は平城京の下級官人がこのあたりに住んでいたかもしれない。