有楽町線に乗ってみる

動機

 1/21に院試が終わり、卒論・院試という、ここ半年間最優先にしていた重要課題が全て終了した。

 全てを終えて、何をやりたいのかと考えてみると、それは「新しい景色に触れること」だった。ここ2ヶ月ほど、家ー大学間の景色か、見慣れた帰省の景色しか見ていない(高尾ー長野も、直通が初めてだっただけで景色自体は見慣れている)。

 とはいえ、ここで長距離旅行に行くほどメンタルは強くない。院試の合否がまだわかっていない状態で、片道何千円もかけて旅行に行っても楽しめないことは必定であろう。もったいない。ならば、移動に金をかけず、都内で、見たことのない景色を見に行きたい。

 そこで考えたのが、「東京メトロで一番馴染みの浅い路線」である。馴染みの浅い路線ならば、その沿線の任意の駅で降りれば新たな景色が広がっているはず。

 一番馴染みが薄い路線はというと、有楽町線だった。有楽町線は、このような路線である。適宜参照されたい。

 多分最後に乗ったのが3年前、ディズニーに行くために銀座1丁目ー新木場を乗ったきりである。今回は和光市駅をスタートとする。

方法

 新しい景色を見るためには降りなくてはいけないが、全駅で降りるわけにはいかない。そこで、サイコロ旅をすることにした。とはいえ、公共の場でサイコロを振るという行為は、近くにテレビクルーがいるから許されているのであって、一般人がやっていると不審者極まりない。サイコロを振ることができるサイトを利用することにした。

https://www.web-dice.com

 そして、ただ降りるだけではあれなので、「1駅につき少なくとも500円使う」というルールを設定することにした。最近全然消費してないし。

 願わくば豊洲で降りて魚が食べたい。

実行

 東京メトロの24時間券(600円)を購入。

 1駅目を決める。1からだと和光市には100%止まらないので、初回のみ、サイコロの数から1を引く。

2だった。地下鉄成増駅。全くどこだかわからない。ただ、「なりまし」でなく「なります」と読むことは知っていた。新高3のときに転勤してしまった東進長野校の社員さんの転勤先が、東進ハイスクール成増校だったからだ。「転勤先は成増になります」という駄洒落を思いついたのでよく覚えている。本当につまらないと思う。

 成増駅に着き、5分ほど歩いた末に武蔵家に入ってしまった。しばらくラーメンを食べていなかったのでうまかった。650円。てんや、かつや、ミスドなど、多彩なチェーン店があって楽しい所だ。

 2駅目を決める。3だった。氷川台駅

 ここは駅前が道路で、住宅街の駅という感じ。またチェーン店やむなしかと思ったが、5分くらい歩き回った末、よさげなパン屋を見つけたのでたまごパンとフィナンシェを買った。520円。知らない店に入って何かを買う、という経験が今日初めてできた。

 3駅目。6だった。護国寺。池袋を通り過ぎてしまった。

 護国寺といえばもちろん護国寺だが、講談社の最寄駅でもある。

いつか『日本の歴史』シリーズの末席に加えてほしいので、媚を売っておきたい。かっこいい建物ですね。

 次に向かったのが護国寺である。護国寺長谷寺を総本山とする真言宗豊山派の寺院で、桂昌院の発願。本尊は如意輪観音。漠然と浄土宗とかだと思っていたので驚いた。

 本堂は小高いところにあり、本堂の手前には「不老門」という門があった。不死機能はいらないと思うが、不老機能は普通に欲しい。

 本堂には無料で入ることができ、三十三観音の像があったり、如意輪観音の御正体があったりと、とても心惹かれる光景だった。現在は国立近代美術館で展示されている、原田直次郎『騎龍観音』の複製が飾られていた。そういえば元々は護国寺にあった絵画である。

 本物こそ美術館に所蔵されているが、本来あったところに複製が存在しているということは(それが優れた複製ならば)嬉しいことである。龍の天井画や巨大絵馬が飾られる外陣に、ひとり西洋画があるのは少し奇妙な絵面だが、それはまぎれもなく当時の光景なのである。筆者は、美術館の特別展で見た仏像を、わざわざ会期終了後に各寺院に行って見たくらいである。

 ここでは、合格祈願のお守り(500円)を買った。もう受けているのに合格祈願とは焼け石に水の感がるが、学業成就にしても、受かっていなければ元も子もないので合格祈願を選んだ。

 如意輪観音は毎月18日や特別な日に開帳されるらしい。また来たい。

 やはり葵の紋があった。江戸で葵の紋を見ると「格式」や「権力」といったものを感じて心が躍る。

 4駅目。4だった。麹町。東京の中心部に近づいてきた。

 麹町といえば、3代目三遊亭圓歌師匠の邸宅がかつて存在したらしい。『中澤家の人々』が出典なので信用ならないが。

 さすが麹町にもなると、錚々たる顔ぶれである。麹町の由来は定かではないらしく、「小路」「麹」「国府路」の3説があるらしい。これは後で知ったことだが、呑気に写真を撮っていた麹町駅1番ホームには、サラリーマンの幽霊が出るらしい。

 店を探したが、麹町ともなると逆に、オフィス、ホテル、大使館、学校、飲食店が99%を占めるため店が見当たらない。寒いのでドトールに入り、550円使った。みんな忙しそうだった。

 5駅目。5だった。新富町

ただ、警視庁を近くで見てみたかったので桜田門で途中下車。日比谷公園の噴水が凍っていたり、かなり見応えがあった。

 新富町へ。築地に近いらしいので、「魚を食べる」という目的を達成してしまった。

 築地本願寺に行ってみる。謎の建築だなと思っていたが、インドの建築様式を取り入れているらしい。内装も豪華だった。当然江戸時代には普通の寺院建築だったようだ。築地本願寺の大屋根は船の目印になっていたとか。

 いよいよ築地へ。とはいえ15:30なので、ほとんどの店は閉まっており、すしざんまい以外で唯一開いていた海鮮丼の店に行った。まぐろカンパチ丼1300円。築地だからといって、激安デカ盛りというわけではない。職人用の食堂は安いのかもしれないが、結局一般人が入れるところは観光地価格だ。築地の市場っぽいところで食べられる、という雰囲気を楽しむためにいくのである。

 6駅目。6だった。新木場を通り過ぎてしまった。あがり。最後に大きい目が続いたため、かなり早く終わってしまった。

 新富町駅からけっこう歩いたため、また戻るのは面倒くさい。次の月島駅がそこまで遠くないため、勝鬨橋の見学がてら歩くことに決めた。

 勝鬨橋はかつて可動橋で、『こち亀』に頻出である。隅田川をはじめ、東京の大きい川は、関東平野であることとその異常な規模から、流れているのか流れていないのかよくわからない。長野の千曲川犀川はえらい違いである。

http://www.j-kochikame.com/special/history/photo_hashi/index.html